Yggdrasill WorkS

神代樹、音無涼風による総合創作サークル「Yggdrasill WorkS」のサイトです

 その部屋は、《大聖堂》と呼ばれていた。
 小さな城ほどもある面積の、石畳の大広間。
 聖なる数であるところの八十八本の柱に支えられるその《大聖堂》には今、二人の人物と一つの“石”だけが在った。
「――本当にこれが……?」
 “石”を手にしたほうの人物が呟く。
 その声音は、疑問というよりも確認の意を含んでいた。
「ああ、それが完成品だ。
 ――とは言え今はまだ“卵”でしかないが」
 もう一方の人物が言う。
 その声もまた、回答というよりは念押しの響きであった。
「ついに長年の望みが叶う日が来るのだな」
「真の完成まではまだ多少の時間を要する」
「しかし成就は確定したのだろう?」
 今度は明らかに質問の調子で言う。
「楽観するにはまだ早いという事を言っているのだが?」
「少なくとも、偉大なる前進を遂げたのは間違いないと私は思うがな」
「思うのは勝手だ。
 しかし、現実はしかと認識しておくべきだろう」
「ふむ……それは確かにそうだ」
「忘れるな。我等は達成のその瞬間を見届けるまで張り詰めていなくてはならん」
「四千三百人の頂点に立つものとして……か。極限まで私情を排除できる貴公の精神には頭が下がるな」
 言って“石”を持つほうの人物は肩をすくめた。
「私は別に世辞を言われるために貴公を呼んだのではない」
「分かっているさ。しかし貴公の口ぶりからすると、この“卵”を見せるためですらないように思えるが?」
「その通りだ」
 皮肉すらこもった問いに、しかし対峙する人物は眉一つ動かさず即答した。
「そうなのか?」
「我等の計画にとって大きな障害になりうる人物が幾人か判明した」
「つまり排除する計画の相談ということか」
「この計画は必ず達成されねばならぬ。それは貴公も分かっておろう」
「当然だ」
「ゆえに、どのような手段を用いようとも障害はすべからく取り除くべきなのだ」
「具体的には何を考えている?」
「知れたことよ。
 ――壁となって立ちふさがる前に潰す」
「良策だな」
「では順を追って説明するとしよう。
 まずは――」